ランナー膝(腸脛靭帯炎)が繰り返す方へ
札幌市中央区のさとこま鍼灸院
走り出してしばらくすると膝の外側がズキズキしてくる。いったん立ち止まると痛みが引くのに、また走り出すとぶり返す。「休めば治る」と思って練習を減らしても、再開するたびに同じ距離で同じ痛みが出る。
そのパターンが続いているなら、ランナー膝(腸脛靭帯炎)の可能性があります。
この記事では症状、原因、セルフケアを整理しながら、「なぜ繰り返すのか」という視点から掘り下げて解説します。繰り返すランナー膝に共通する動作パターンについても触れているので、同じ膝を何度も痛めている方にとって特に参考になるはずです。
ランナー膝の正式名称は腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)です。太ももの外側を走る帯状の組織「腸脛靭帯」が、膝外側の骨の突起と繰り返しこすれることで炎症を起こします。長距離ランナーの5〜30%が経験するとされる、ランニング障害の中でも頻度の高いケガです。
ランナー膝の症状|膝の外側に出る痛みの3段階
ランナー膝の主な症状は、膝の外側(やや上方)に現れるズキズキとした痛みです。症状は段階的に進行します。自分が今どの段階にいるかを確認してみてください。
初期段階
走り終わった後に膝の外側が痛む。翌日には引いていることが多く、「たいしたことはない」と練習を続けてしまいがちな時期。安静にすると痛みは消えるが、走るたびに繰り返す。
中期段階
ランニング中に痛みが出始める。とくに走り始めてから5〜10分ほどで膝の外側が痛くなり、下り坂やゆっくりしたジョギングで特に強く感じる。「ある距離を超えると痛くなる」という感覚が出てくる。走り続けるために痛みを我慢している状態。
慢性化した段階
歩行時や階段の上り下りでも痛みが生じる。「少し走っては休む」を繰り返しても改善しない。痛みが引いてまた走り始めると、同じ距離で同じ痛みが出るパターンが固定化している。
特徴的なのは「ゆっくり走ると痛いが、スピードを上げると和らぐ」ケースがあることです。これは膝の屈曲角度によって靭帯と骨の接触部位が変わるためで、腸脛靭帯炎に特有の現象のひとつです。
回復にかかる期間の目安
個人差が大きいため断言はできませんが、一般的な目安として参考にしてください。
初期段階で気づいて走行量を調整しながらセルフケアを続けた場合、数週間で症状が落ち着くことが多いとされています。中期段階では数週間から2か月程度を要するケースが増えます。慢性化した段階では、原因となっている走り方のクセや筋バランスが変わらない限り、痛みが引いても再発しやすい状態が続きます。セルフケアを2週間程度続けても改善が見られない場合は、専門家への相談を検討してください。
症状が続いている、繰り返している方へ 「自分は今どの段階か」「何が原因か確認したい」という場合はお気軽にご相談ください。
ランナー膝の原因|なぜ繰り返すのか
基本的なメカニズム
膝を約20〜30度曲げた瞬間——ランニングで足が地面に着地するまさにその角度——に、腸脛靭帯と膝外側の骨の突起との摩擦が最も強くなります。長距離を走るほどこの摩擦の回数が積み重なり、炎症が生じます。
繰り返す人に多い発症要因
ランナー膝は単一の原因で起こる障害ではなく、複数の要因が重なって発症することがほとんどです。とくに繰り返す方には、以下の要因が絡んでいることが多くあります。
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オーバーユース(使いすぎ):
急な走行距離、スピードの増加、疲労が抜けないまま練習を継続
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着地パターンの問題:着地の瞬間に膝が内側に入る(ニーイン)、つま先が外を向く
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骨盤、股関節の安定性不足:
着地側に骨盤が傾く、お尻の筋肉(大臀筋・中臀筋)や大腿筋膜張筋の硬さや弱さ
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腕振りや体幹の左右差:
腕振りや体幹の使い方に左右差があると、着地時の負荷の偏りに関係していることがあります
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下肢アライメントの問題:O脚・足部の回外など
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環境的要因:下り坂・傾斜のある路面・クッション性の低下したシューズ
札幌のランナーが特に注意したい時期
札幌のランナーでは、気候や路面環境の変化も負担に関係することがあります。冬季に屋外を走れない期間が続くため、春先にトレッドミルから路面走行へ切り替えるタイミングでランナー膝が発症するケースが多くあります。着地の感覚や筋肉への負荷がトレッドミルと路面では異なるため、いきなり走行距離を戻すことが過剰な負荷につながります。また北海道マラソン(8月)に向けて5〜7月に急激に練習量が増えるサイクルも、発症リスクが集中する時期です。走行距離を戻す・増やすペースは、冬明け・シーズン開始時ほど慎重にコントロールすることをおすすめします。
ランナー膝かどうかを確かめるセルフチェック
「グラスピングテスト」という確認方法があります。
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椅子に座るか床に座って、膝を90度に曲げる
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膝の外側のやや上方——指で触れると硬い骨の出っ張りを感じる部分(膝の外側上顆)——を手で押さえる
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そのまま膝をゆっくり伸ばしていく
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伸ばす途中で押さえている部分に痛みが出れば、腸脛靭帯炎が疑われる
ランナー膝の痛みは膝の「外側上方」に出るのが特徴です。痛む部位が膝の外側でも下寄りの場合、あるいは内側に感じる場合は、別のケガである可能性があります。似た症状を示す疾患として以下があります。
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鵞足炎(がそくえん):膝の「内側」に痛みが出る点でランナー膝と区別できます
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外側半月板損傷:膝を深く曲げたときや、足を回すような動作で痛みが強まる傾向があります
いずれもセルフチェックだけでは判断が難しいため、痛みが続く場合は専門家に診てもらうことをおすすめします。
ランナー膝のセルフケア
アイシング(急性期)
痛みや熱感がある場合は、タオルで包んだ氷や保冷剤を膝の外側に10〜15分あてます。膝付近の腸脛靭帯に直接フォームローラーを当てることは炎症を悪化させるおそれがあるため、急性期には避けてください。
腸脛靭帯のストレッチ
立位でのストレッチ(クロスレッグ)
足を左右にクロスして立ち、上半身を前足側へゆっくり傾けます。太もも外側に心地よい伸びを感じる位置で20〜30秒キープします。
横向き寝でのストレッチ
伸ばしたい足を上にして横向きになり、その足を前方に踏み出すように床に置きます。腰から太もも外側に体重を乗せるように伸ばします。20〜30秒を目安に行います。
座位でのストレッチ
片足を伸ばして座り、もう一方の足をその外側にクロスして置きます。立てた膝を抱え込みながら上半身をひねり、肘で膝を軽く押さえて外ももを伸ばします。20〜30秒を目安に行います。
股関節の筋力トレーニング(クラムシェル)
床に横向きに寝て、両膝を90度に曲げます。足首を合わせたまま、上側の膝を貝殻が開くようにゆっくり持ち上げて下ろします。骨盤の安定を担う中臀筋を鍛えることで、腸脛靭帯への負荷を分散できます。左右10〜15回を目安に行います。
テーピング、サポーターの活用
テーピングやサポーターは、腸脛靭帯への負荷を一時的に軽減する補助手段として有効な場合があります。ただしこれらはあくまで練習継続中の負担を和らげるためのものであり、痛みの根本的な原因にアプローチするものではありません。貼り方や選び方については、専門家に相談したうえで使用することをおすすめします。
練習量のコントロール
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走行距離、スピードを急に上げない(週10%以内を目安に増やす)
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下り坂、傾斜のある路面のランニングを一時的に減らす
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周回コースは反対回りを取り入れて左右の負荷を均等にする
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クッション性が落ちたシューズは早めに交換する
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練習後はアイシングとストレッチを習慣にする
セルフケアだけでは届かないところ
アイシングやストレッチで痛みが落ち着いても、「なぜそうなったか」、着地パターンのクセ、骨盤の動き方、股関節の使い方が変わらなければ、同じ場所に同じ負荷がかかり続けます。「痛みが引いたからまた走る→また同じ距離で痛む」というサイクルを繰り返している場合、原因として考えられる動作パターン自体を確認する段階に来ているかもしれません。
セルフケアを続けても改善しない、繰り返すという方へ 走り方を含めた原因の確認が次のステップです。
さとこま鍼灸院のランナー膝へのアプローチ
繰り返す背景は、走り方や体の使い方の中に隠れていることがあります
ランナー膝を何度も繰り返す方のケースに共通しているのは、その痛みを引き起こしている動作パターンが変わっていないことです。膝の痛みは結果であり、着地のクセや骨盤の安定性といった要素は走り方の中に潜んでいます。
なお、ランニング自体が膝に悪いわけではありません。走り方や練習量の管理という観点が整えば、走ることを続けながら症状と向き合うことは十分に可能です。
動作分析で実際に何を見るか
さとこま鍼灸院では、痛みの部位だけを見るのではなく、走り方、体の使い方を評価する動作分析を施術の起点とし、「どの動きでどこに負担がかかっているのか」を整理したうえで施術方針をご説明します。ランナー膝の方に対して実際に確認している視点は次のようなものです。
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着地の瞬間に膝が内側に入っていないか(ニーイン):
腸脛靭帯への横方向の張力が増し、摩擦が強まる原因のひとつとして考えられます
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着地のたびに骨盤が傾いていないか:
お尻の筋肉(中臀筋)の弱さや疲労から生じ、腸脛靭帯全体の緊張を高めることがあります
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腕振りや体幹の左右差が着地の負荷に影響していないか:
体幹の回旋バランスが崩れると、着地側の膝に偏った負荷がかかることがあります
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足首の硬さがつま先の向きに影響していないか:
足首の柔軟性が低下するとつま先が外を向き、膝の内側への入り込みが生じやすくなることがあります
これらを複合的に評価したうえで、鍼灸・あん摩マッサージ指圧による施術と、日常でできるセルフケアのご案内を組み合わせた施術方針をご説明します。
ランナー目線で練習と施術を考える
院長はマラソンランナーとして自らも走り続けており、「練習を完全にやめる」以外の選択肢を一緒に考えることを大切にしています。大会までの残り期間、現在の練習量、目標タイムといった状況をお聞きしたうえで、練習再開に向けた方針を一緒に考えます。
「走ることをあきらめたくない」という気持ちを前提に、施術の方針を立てます。
よくある質問
Q. ランナー膝はどのくらいで治りますか?
個人差が大きく一概には言えませんが、初期段階で気づいてセルフケアと練習量の調整を続けた場合、数週間で落ち着くことが多いとされています。慢性化している場合や繰り返している場合は、走り方のクセや筋バランスを確認しながら対応することで、症状の安定を目指します。セルフケアを2週間程度続けても改善が見られない場合は、専門家に相談することをおすすめします。
Q. 走りながら治せますか?練習は続けていいですか?
症状の段階によります。歩行時にも痛みが出ている場合は、まず炎症を鎮めることが優先されます。走り終わった後だけ痛む初期段階であれば、走行距離、強度を調整しながらケアと並行して練習を続けることができる場合もあります。ランニング自体が膝に悪いわけではなく、体が対応できる範囲で継続することは問題ありません。「どの程度なら走っていいか」は症状をみながら判断する必要があるため、迷う場合はLINEでご相談ください。
Q. 鍼灸はランナー膝に対してどのように用いますか?
さとこま鍼灸院では、腸脛靭帯の緊張を高める原因のひとつとして、大臀筋・大腿筋膜張筋・ハムストリングスなど周囲の筋肉の硬さに着目しています。鍼灸・あん摩マッサージ指圧を通じて、これらの深部の筋緊張にアプローチすることを施術の目的のひとつとしています。施術の内容や適応は個人の状態によって異なりますので、詳しくはご相談ください。
Q. 整形外科と鍼灸院、どちらに行くべきですか?
強い痛みがある、歩行が困難、他の疾患が疑われるといった場合は、まず整形外科での診断を受けることをおすすめします。「ランナー膝と診断されたが湿布だけでは変化がない」「繰り返している」という段階で、走り方や筋バランスへのアプローチを検討する場合に鍼灸院という選択肢が入ってきます。どちらが適しているか迷う場合は、LINEでご状況をお聞かせください。
Q. 再発を繰り返しています。どうすればいいですか?
繰り返す方の多くは、痛みが引くたびに同じ走り方、練習量で再開しているパターンが見られます。痛みを和らげることと、「なぜそうなったか」を確認することは別のアプローチです。当院では動作分析をもとに、着地パターンや筋バランスを含めた原因として考えられる要素の整理をご一緒します。
まとめ
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ランナー膝(腸脛靭帯炎)は、膝の外側に痛みが出る代表的なランニング障害
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着地時の膝の入り方、骨盤の傾き、体幹や腕振りの左右差など、
走り方の中に背景が潜んでいることがある
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初期段階ではセルフケア(アイシング・ストレッチ・クラムシェル)と
練習量の調整で対応できる場合がある
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「痛みが引いたら走る→また痛む」を繰り返している場合は、動作パターンの確認が次のステップ
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ランニング自体が膝に悪いわけではなく、
走り方と練習量の管理が整えば走りながら向き合うことができる
セルフケアで改善しない、または繰り返しているという場合は、
走り方・筋バランスを含めた確認をおすすめします。
さとこま鍼灸院について
走ることをあきらめたくない方のための鍼灸院です。
さとこま鍼灸院では、理学療法士、はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師の国家資格を持つ院長が、ランナー膝に対して動作分析をもとに身体の使い方を確認し、鍼灸と手技を組み合わせて対応しています。「繰り返す原因を確認したい」「大会前に相談したい」という方は、LINEまたはWEB予約からご相談ください。
著者:さとこま鍼灸院 院長 皆川智司 (院長プロフィールを見る)
理学療法士、はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師
整形外科、スポーツ医療の現場で約20年の臨床経験
最終更新日:2026年4月11日
